地底人達の楽園〜wikileaks本部について〜

地底人達の楽園〜wikileaks本部について〜


<参照>
wikileaks本部写真
http://360.fotograf.nu/bahnhof/

NHKクローズアップ現代  機密告発サイト・ウィキリークスの衝撃
http://cgi4.nhk.or.jp/gendai/kiroku/detail.cgi?content_id=2959


 建築は時にそのクライアントやそれを成立させた社会の性質を如実に現す。例えば、西欧のゴシック建築は、中世の神を中心とした社会の秩序や宗教的権威とそれを庇護する権力の強大さが表現されたものであるし、20世紀に出現した超高層ビルディングは均質空間を垂直に積層することで、お金というものの性質や資本の蓄積が立体物として表現されていて、まさに20世紀的な資本主義が表現されている状態だ。また、見方を変えれば、自然現象や地理的な条件、政治権力、資本等、強い力をもった余条件は、特徴的な建築様式を生み出しやすいともいえる。

 それでは、今日的な強い力をもった余条件とは何だろうか。それは後世になって振り返って初めて分かるものかもしれないが、おそらくその筆頭候補は、「情報」だ。「情報」は20世紀的な権力や資本のみならず、長い間人類の「聖域」であった生命にとってすら、上位概念になりつつある今日この頃だと思う。つまり、情報を制するものがこの世界を制する、そういう状況になりつつあるということだと思う。「情報を制するもの」とはいったいどんな主体だろうか。それはおそらく今世紀最高傑作か最大の話題作のクライアントになり得る。今世紀の建築表現をまじめに考えようとしたら、これは避けては通れない問いであり、今現代建築家の全てが強い関心をもっている事柄だ。これに関心を持っていない建築家は、現代の建築家では無いとさえいえると思う。

 「情報」の時代の建築のあるべき姿を模索中の建築家にとって、決して見過ごす事のできない「事例」が現れてしまった。それはスウェーデンにある「Wikileaks本部」。20世紀に生み出された最も強大な力である核兵器から、ある一定量の空間を生存可能域としてディフェンドするために地下に作られた「核シェルター」、言わば力の隙間とでもいうべき空間を、リノベーションして作られていると言う。これは、非常に重要なことだと思う。

 「Wikileaks」とは、様々な機密情報を公開するウェブサイトで、情報提供者の匿名性を維持し、機密情報からその者が特定されないようにする努力がなされているという。「Wikileaks」は今日、米軍やアメリカ政府のみならず、世界中の情報に大きく依存している権力主体を震撼させていることだろう。「Wikileaks」もつ力の源泉は、ハッキングやリーク行為、ジャーナリズムなどを組織化したその情報収集・判断力にあり、それは20世紀的な主体のもつ権力を揺るがし、時に無効化すらしかねない。既成権力からすれば不正行為以外の何物でもなく、それ故本来はもう少し手前で「消されていた」可能性の高い試みである。しかし、彼らは、自らの活動を世界中の報道メディアに誇示するところまで継続し、その力を行使し続けている。それを可能にしたのは、「核シェルター」をリノベーションして作られた「Wikileaks本部」の存在が大きいのではないか。物理的にも政治的にも、だれも消す事が出来ずにここまできてしまった「Wikileaks本部」。近い将来「情報を制するもの」となる可能性すらある。今後の、既成権力とのせめぎ合いや衝突の発生も気になるところではあるが、さて、ここでは彼らのヘッドクォーターの「建築的」特徴を確認しておきたい。

 http://360.fotograf.nu/bahnhof/より。まず注目したいのは、ストックホルムという大都市の地下にあること。写真をみるところ、岩盤をくりぬいて作られていると思われる。地上が先進国の都市であることで攻撃しにくく、万一地上がすべて核兵器で破壊されても活動は継続できるであろうし、要塞として難攻不落であろう。地下という閉鎖空間に暮らすにあたっての光や空調などの環境調整は、空間にある程度の規模があれば精神的な圧迫は少なそうだし、現代技術をもってすれば全く持って可能だろう。地下というのは、規模とその兵站を確保している限りにおいては、楽園なのかもしれない。ヒトラーの最期は地下か。そういえば『新世紀エヴァンゲリオン』の「ネルフ本部」も地下施設だったな。
 http://360.fotograf.nu/bahnhof/content/Aggregaten_diesel_rekt_large.htmlを見てみたい。ここに写っているのは、おそらく水冷ディーゼルエンジンだ。これだけの活動を支え、コンピューターやサーバなどの設備の維持や環境調整を行うための電気を生み出しているのだろう。あくまで推測であるが、まず軽油を備蓄する設備があるだろう。おそらく、地上で給油すれば備蓄タンクに送油され、そこから燃料タンクへ供給されてエンジンに供給されるのではないか。おそらく、その備蓄によって、長い間持ちこたえることができるのであろう。水についてはどうだろう。これも備蓄設備があるかもしれない。都市の地下に有りながら、インフラにはあまり頼ってはいないのではないか。いわゆる「インフラフリー」が局所的にかなりの度合いで達成されている可能性がある。
 http://360.fotograf.nu/bahnhof/content/office_besk_large.htmlを見てみたい。一見すると今日的なIT企業のオフィスであるが、様々なことが読み取れる。まず地下空間でのストラクチャーの在り方として、地上とは異なる「上から吊る」という選択肢があることに気がつく。磯崎新氏による「セラミックパークMINO」やノーマンフォスター卿によるお茶の水のオフィスビルなど、大きなストラクチャーからつり込むというのは地上でもあり得るが、下からも上からもつくることができるのは、地下での大きな特徴といえるだろう。スタッフ達が執務する床の上に、その上を大きく横切ってステンレス構造と思しきブリッジがかかり、その先にボスの執務スペースと思しきがある。スタッフの「声」が聞こえ、スタッフが「見上げる」位置にボスの空間と思しきがある。そこには螺旋階段で登れるのか。組織としては、役割分担やトップとそれ以外というヒエラルキーが比較的はっきりした組織体系なのかもしれない。
 http://360.fotograf.nu/bahnhof/content/datahall_medT_rekt_large.html、http://360.fotograf.nu/bahnhof/content/konferens_besk_large.htmlを見てみたい。情報組織としての中枢であるサーバスペースの上に会議室がある。ガラス張りになっていて、ここからは、この組織の中枢たるサーバ群が一望できるようになっている。この組織のボス、ジュリアン・アサンジは、おそらく実空間も情報媒体として捉え、編集する勘の鋭い人間だろう。
 
 さて、彼ら「地底の住人達」は「情報を制するもの」としての地位を築くことができるのか。そして、彼らの地下オフィスは、21世紀の建築様式に、何か重要なメッセージを放っていはいないだろうか。注視しておく必要はあると思われる。
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by dabura_m | 2010-12-06 19:14 | kenchiku


建築家/DABURA.m代表 の 光浦高史です


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建築家。1977年生まれ。早稲田大学理工学部建築学科を卒業後、2000年~2007年青木茂建築工房に所属。その間、住宅、再生建築、公共建築など様々なプロジェクトのデザイン・設計監理 を担当。青木氏の著作や学術研究にも参加。2009年より、池浦順一郎と「DABURA」を共同で主宰。大分市をベースに九州・山口で設計活動中。
1級建築士。

住宅やクリニックをはじめ、さまざまな建築設計・デザインにとりくんでいます。お気軽にご相談下さい。
mitsuura@dabura.info

<受賞>
2010年豊の国木造建築賞・優秀賞
ART PLAZA U-40建築家展2011にて投票第1位獲得
九州建築家バトル2011にて優勝

<作品2010>
ココロアニマルクリニック+池田邸
黒田歯科クリニック
<以前の担当作品>
湯布院のゲストハウス
「佐伯市蒲江 海の資料館・時間(とき)の船」
S邸

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